|『正信偈』学習会|仏教入門講座
眞宗教證興片州 選擇本願弘惡世  令和3年7月20日(火) 
- 2021年12月13日
 「眞宗教證興片州」に「眞宗」とありますけれどもこれは宗派の名前ではありません。親鸞聖人が法然上人を讃嘆した和讃に、これと同じ内容のものがあります。

善導源信すすむとも 本師源空ひろめずは 片州濁世のともがらは いかでか真宗をさとらまし

 ここにある「真宗」は「真実の宗」という意味で「真実の仏教」ということです。現在、宗派名として「真宗」を使っていますが、これが正式に認められたのは明治時代になってからです。蓮如上人が本願寺を浄土宗から独立させた時に「真宗」「浄土真宗」と名乗りましたが、浄土宗からの反発があり認められす「門徒宗」「一向宗」と呼ばれていました。蓮如上人は親鸞聖人の言葉から「真宗」」「浄土真宗」という宗派名を希望したのですが、親鸞聖人は宗派名としてではなく、法然上人から賜った念仏の教えこそが真実の仏教であるという意味で用いているのです。真実の仏教とは、すべての人を、漏らすことなく救うことができる仏教ということです。
 親鸞聖人の時代、京都は異常気象が続いた上に、源平の合戦による略奪が繰り返されていました。このような状況の中で、国家鎮護のための寺院である奈良や比叡山、高野山にいる僧侶たちは、ただ読経を繰り返すだけでした。その中で、法然上人は国から保証された身分を投げ捨てて、生活に苦しむ人々の中に身を投じたのです。その姿に親鸞聖人は、真実の仏教の教と証を見たのです。 親鸞聖人の頃、日本のことを九つの州からできているということで「九州」ともいいました。この「九州」が世界の片隅にあるということで、親鸞聖人は「片州」と言ったのです。このような世界の片隅に法然上人が生まれて下さったことへの深い感謝が込められている言葉です。
 「選擇本願弘惡世」の「選択」は阿弥陀仏が本願を選びとったという意味ですが、この言葉は『仏説無量寿経』の古い異訳である『平等覚経』『大阿弥陀経』に出ています。同じ言葉を『仏説無量寿経』では「摂取」と訳しています。つまり「すべての衆生を摂取するために選び取った本願」という意味です。法然上人が「摂取」ではなく、あえて古い翻訳である「選択」を用いたのには理由があります。法然上人は『選択本願念仏集』の「三選の文」に次のように語っていらっしゃいます。

 「それすみやかに生死を離れんと欲はば、二種の勝法のなかに、しばらく聖道門を閣きて選びて浄土門に入るべし。浄土門に入らんと欲はば、正雑二行のなかに、しばらくもろもろの雑行を抛てて選びて正行に帰すべし。正行を修せんと欲はば、正助二業のなかに、なほ助業を傍らにして選びて正定をもつぱらにすべし。正定の業とは、すなはちこれ仏名を称するなり。名を称すれば、かならず生ずることを得。仏の本願によるがゆゑなり」

 ここで法然上人は「浄土門」「正行」「正定業」と3回にわたって選択することを勧めています。つまりこちらが「選択」しなさいというのです。悪世とは『仏説阿弥陀経』に「五濁悪世」とある劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁のことです。このような時代であるからこそ、数ある仏道の中でもすべての衆生を摂取する本願を選択しなければならないというのです。






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